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3年生にエールを送る西陵高校吹奏楽部員たち=2025年1月18日、長崎県諫早市、オザワ部長撮影

My吹部seasons

 1月18日午前6時半。日の出前で、まだ暗い音楽室に、長崎県立西陵高校(同県諫早市)の吹奏楽部員たちが集まっていた。

 この日は大学入学共通テストの初日。西陵高では多くの3年生が試験前に登校し、学校から貸し切りバスに分乗して試験会場の長崎大学へ向かう。その際、吹奏楽部が駐車場の前で演奏。ほかの部は駐車場や沿道からバスにエールを送るというユニークな「送り出し」が学校を挙げてのイベントとなっているのだ。

 吹奏楽部顧問の遠藤克子教諭はこう語る。

 「もともと長崎の多くの公立高校では共通テストを団体戦と考えていて、3年生がそろってバスで行く形にしている学校が少なくありません。西陵高校で送り出しを始めたのは2011年から。3年生が大学入試センター試験(当時)に出発するとき、ちょうど吹奏楽部が朝練をしていたので『せっかくだから、応援しようよ』とバスに向けて校歌を歌ったのが始まりです」

 その後、校歌は演奏になり、ほかの部も加わって現在のような盛大なイベントになったという。

 早朝に集合した部員たちは音出しなどの準備を始める。打楽器パートで演奏に参加するのはドラムセットだけなので、ほかのメンバーはポンポンを持って踊ったり、応援メッセージが書かれたパネルを持ったりする。通称「パネル隊」だ。

 その後、慌ただしく音楽室から駐車場へ楽器を運び出し、教室に集合している3年生が駐車場へ出てくるのを待ち受ける。冷え込んだ真冬の朝なのに、部員たちは笑顔で、心なしか頰も紅潮していた。

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演奏で3年生にエールを送る西陵高校吹奏楽部員たち=2025年1月18日、長崎県諫早市、オザワ部長撮影

 午前7時半。3年生が登場すると、まるでスターが現れたかのようにパネル隊が駆け寄っていき、吹奏楽部が演奏を開始する。

 曲はサカナクションの《新宝島》、氷川きよしの《限界突破×サバイバー》、Adoの《私は最強》、そして、吹奏楽部のオハコでもあるミュージカル映画『ヘアスプレー』のメインテーマ《You Can’t Stop the Beat》など5曲だ。元気な演奏が響く中、3年生は次々とバスに乗り込んでいく。

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 パネル隊が「無限大の未来へ」「自分の力を信じて」と書かれたパネルを掲げる中、動き始めたバスは朝焼けの光を浴びながらゆっくりと正門から出ていく。

 吹奏楽部は最後の曲を演奏し終えると、バスに向けて指を指しながら「ファイトー!」と声を上げた。すると、バスの中から「サンキュー!」という声が返ってきた。恒例の「サンキュー返し」だ。

 そして、バスは正門前の下り坂を遠ざかっていき、約15分間の「送り出し」は無事終わった。

     ♪

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